爆発する「時価」を隠す登記簿の謎 ― 「安すぎる額面」が意味するもの

🎤ビジネスコラム

バングラデシュの未上場株に投資する際、あなたは「額面(Face Value)」という名の亡霊に遭遇します。

  • 登記簿(RJSC): 「この株の法的価格はわずか1タカです。」
  • 取引の場: 「この株の市場価値は1000タカ(またはそれ以上)です。」

この心理的なギャップは、特に日本の投資家にとって不快感や不安を生みかねません。しかし、この「1タカの登記」こそが、スタートアップが成長している揺るぎない証拠となっている場合もあります。

登記簿の頑固な真実:時価が上がっても、額面しか載らない

ここで、バングラデシュの登記簿が持つ頑固な特性を理解する必要があります。 とある会社において、設立時の額面が100BDTだった株式を、成長に伴う流動性確保のために100分割したとします。この資本構造の変更は、必ず RJSC に申請し、登記簿に「100BDT→1BDTに変更」として記録されます。(事業価値や時価とは無関係であっても。)

投資家が抱く疑問:「なぜ時価は反映されないのか?」

ここで投資家は疑問を持ちます。「時価は上がっているのに、なぜいちいち分割後の額面(1タカ)という、無意味に低い数字を登記簿に載せるのか?」 その答えは、「登記簿は会社の『価格』を記録するものではなく、『資本の形式』を記録する場所だから」という点に集約されます。

  • 時価(たとえば1000タカ)は、市場の「期待」であり、刻一刻と変動します。
  • 額面(1タカ)は、会社の資本構成を定める「形式的な基準」であり、株主総会の特別決議を経なければ変更されない「頑固な固定値」です。

バングラデシュの登記簿は、この「形式(額面)」を杓子定規に記録することに徹しているため、時価がどれだけ爆発的に上がっても、その成長の熱狂は一切反映されないのです。 逆に日本では、「額面をいじって登記する」という発想そのものが現在の制度にはないということです。

成長の証は「Share Premium Account」に隠されている

登記簿の額面を超えた「成長による付加価値(株式プレミアム)」は資本金には含まれません。分配制限のある別枠「Share Premium Account」に会社の純資産として内部計上されます。

投資家が持つべき「時価の証明書」

この仕組みを理解すれば、登記簿の「1タカ」という数字は、あなたの気分を害するものではなく、むしろ「この会社は、時価が額面を大きく上回る成長期にある」ことを示す静かな証拠だと捉えられます。 バングラデシュへの投資家は、登記簿の低い額面価格を見て動揺するのではなく、以下の真の価値を示す文書に注目すべきです。

  1. 新株発行報告書(Form XVなど): RJSCに提出されるこの報告書には、「何株を、実際にいくら(時価)で売却したか」という真の取引価格が記載されています。
  2. バリュエーションレポート: 専門家が作成した、会社の真の企業価値を算定した文書です。

バングラデシュでは、「登記簿は形式、実態は別」ということを理解すれば、登記簿の「1タカ」という数字は、単なる資金調達戦略の産物であり、投資の障害にはならないことが分かります。

出典:BanglaBiz編集部

コメント

タイトルとURLをコピーしました